大宮図書館には、国宝『類聚古集』をはじめ、教科書などに掲載されている『解体新書』など、数多くの貴重資料が所蔵されています。
大宮図書館では、貴重資料画像データベース龍谷蔵(https://da.www-uf01.ufinity.jp/ryukoku_lib_test/index.html)でデジタル画像を公開している他、毎年秋の特別展観を開催して、その年度のテーマに沿って貴重資料の実物を公開しています。また、毎年研究や学習などに役立ちそうな貴重資料を選んで購入するなど、蒐集にも力を入れています。
今回は、大宮図書館の貴重資料を紹介するにあたり、NHKで「おとなの人形劇 平家物語」として、再放送が話題となっている『平家物語』と新たに収集した『義経記』を紹介いたします。
・『平家物語』(請求記号021-332-12)
『平家物語』は、栄華を極めた平家が、源氏との戦に敗れ壇ノ浦で滅亡していくまでの姿を描いた軍記物語です。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。・・・」という冒頭の一文は、国語の授業などで習った方も多いのではないでしょうか。実は、一部の教科書や参考書の図版には、大宮図書館所蔵の『平家物語』の画像が掲載されています。
『平家物語』には、読本として著された読本系と琵琶法師が語る内容を記した語り本系の2種類があります。大宮図書館所蔵の『平家物語』は、語り本系の一方流(いちかたりゅう)に属する覚一本(かくいつぼん)の1つです。琵琶法師の覚一は自らの死期を悟り、後世に誤った内容が伝わらないように、語りの内容を書きとらせました。書きとらせたものが覚一本となったのですが、原本は既に失われたようで、幾つか伝わっている写本の中で、最善のものが大宮図書館の『平家物語』とされています。そのため、岩波書店の古典文学大系の『平家物語』の底本として使用されたり、教科書などの挿絵に使用されたりしています。
※『平家物語』巻頭部分
ちなみに、2024年度秋(10月18日(金)、10月21日(月)~27日(日)期間予定)に、大宮キャンパス本館展示室で開催が予定されている大宮図書館特別展観では、「中世本願寺の文学―『平家物語』と和歌を中心に―」というテーマで開催する予定です。『平家物語』を中心に、和歌に関する古典籍を展示する予定ですので、この機会に是非ご覧ください。
※2024年度大宮図書館特別展観ポスター(案)
・『義経記』(ぎけいき)(請求記号021-641-8)
『義経記』は、室町時代前期に成立したとされる軍記物語です。全8巻の内容は、源平の合戦で活躍した源義経の一代記です。ただし、合戦の華々しい活躍はほとんど書かれず、幼少期と平家滅亡後に兄頼朝に追われて奥州平泉で自害するまでの逸話を中心に書かれています。先に紹介した語り本である『平家物語』が義経の合戦での活躍を書いているのに対して、『義経記』は義経の生涯の別の部分に焦点を当てており、相補関係があるとも言えます。『義経記』にある武蔵坊弁慶との主従関係の絆の逸話や愛人静御前との逸話などは、後の浄瑠璃や歌舞伎、御伽草子などの素材となり、後世の文学に影響を与えました。
今回、紹介した『義経記』は、大宮図書館が2023年度に蒐集したものです。江戸時代初期の寛永12(1635)年に刊行された丹緑本です。丹緑本とは、墨刷りの版本の挿絵に筆彩を施した手彩色本のことです。『義経記』には全部で65図に及ぶ挿絵があり、それぞれに筆彩が施されていることから、丹緑本として極めて珍しいものとされています。
※『義経記』頼朝と義経の対面の場面
※『義経記』山伏に扮して北国へ逃れる義経の一行