合同分科会 2024年度会合「本物か偽物か ~真実はいつもひとつか?~」

印刷用ご案内

日時 2024年10月29日(火) 分科会 13:30~17:50
開催方法 場所:神戸国際会議場
集合開催(当日の各講演の配信予定はありません。)
参加対象 SS研会員、CS研会員、IS研会員の各機関にご所属の方
参加費 無料
参加申込み 開催済
その他 本会合は、2024年度秋イベント(28日:科学技術計算分科会教育環境分科会BoF、29日:システム技術分科会、合同分科会)の一部です。

開催趣旨

 ディープフェイクを始めとする生成AI技術の進展により、私達は本物と見分けがつかないコンテンツが容易に作成され、日常的に目にする時代に生きています。この新しい技術は、誤情報や偽情報の拡散という重大なリスクを孕んでいる一方で、私たちの創造性をさらに広げる可能性も秘めています。 本年度の合同分科会では、生成AI技術の現状とその潜在的な危険性を理解し、どのようにして真実を見極め、技術を安全かつ効果的に活用するかについて様々な観点から議論します。情報が氾濫する現代において、真実の価値が問われる今だからこそ、私たちは情報の信頼性を見極め、正しい判断を下す力を養う必要があります。技術の進化とその影響について深く考える機会とし、真偽の混じる情報との健全な関係を築くための知見を共有します。真実はいつもひとつ、か?

プログラム(敬称略)※予告なく変更する場合がございます。予めご了承下さい。

【公開可能な資料のみ会合後に掲載予定】

Session1 [司会]楫 勇一(名古屋大学)
13:30-13:40
会長挨拶
岡村 耕二 (九州大学情報基盤研究開発センター)
開催趣旨説明
立川 智章 (東京理科大学)
13:40-14:35
講演 35分
Q&A 10分
講演
自然言語処理による欺瞞と広がりの検出
生成AI時代のフェイクニュース対策
狩野 芳伸 (静岡大学)プロフィール
 

人々の意見や気持ちを形作る媒体は、マスメディアからSNSへと移行しています。その中で欺瞞・フェイクニュースを検出し、意図的な意見形成への影響を防ぐことは火急の対策を要する状況です。テキストメッセージは作成伝達のコストが低い一方で人々への影響力は大きく、我々の研究では自然言語処理による解析と人物属性の推測を基盤とし、最終的には世論形成過程のシミュレーションを目標としています。こうした取り組みを周辺関連技術の説明を交えてご紹介します。

 自然言語処理, 生成AI, フェイクニュース, SNS, 世論
  プレゼン資料(11/6版)(PDF:1.4MB)
14:25-15:10
講演 35分
Q&A 10分
講演
ディープフェイクの実態と対策
計算社会科学の見地から
笹原 和俊 (東京科学大学)プロフィール
 

本講演では、急速に進化するディープフェイクの現状とその社会的影響を解説し、計算社会科学の視点から対策を議論します。まず、最新のAI技術によるディープフェイクの生成とソーシャルメディアでの拡散の様々な事例とその背後にあるメカニズムについて解説します。さらに、ディープフェイクの検出技術の現状と課題、拡散抑止のための多様な介入方法を紹介し、技術的・社会的側面の両面からの対応策を議論します。

 計算社会科学, 複雑系科学, フェイクニュース, ディープフェイク, 情報拡散
プレゼン資料(PDF:5.7MB) 
15:10-15:15
展示紹介
15:15-16:15 休憩&展示見学(60分)
Session2 [司会]原田 慶(富士通株式会社)
16:15-17:00
講演 35分
Q&A 10分
講演
インターネットに信頼をもたらす偽情報対策技術
~偽情報の検知・評価・システム化~
山本 大 (富士通株式会社)プロフィール
 

近年、自然災害や医療・選挙・経済などさまざまな分野で偽・誤情報がインターネットに流通し、大きな社会問題となっています。本講演では、インターネット上の真偽不明な情報に対処するために、富士通が研究開発に取り組んでいる、多様な根拠情報に基づく真偽判定技術について紹介します。また、2024年7月に「経済安全保障重要技術育成プログラム」に採択された、偽情報対策システムの研究開発について紹介します。

 偽・誤情報, フェイクニュース, 生成AI, 統合分析, SNS
 プレゼン資料(11/5版)(PDF:3.2MB)
17:00-17:45
講演 35分
Q&A 10分
講演
デジタルトラストの現状と課題
湯淺 墾道 (明治大学)プロフィール
 

虚偽情報やディスインフォメーションへの対策が各国で急務となっている。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)社会技術開発センター(RISTEX)では、2023年度から「情報社会における社会的側面からのトラスト形成」プログラムを設定し、研究開発プログラムを募集している。デジタルトラスト、デジタル・ソーシャルトラストという概念自体に明確な定義や一般的な理解が存在するわけではなく、本プログラムでは、高度情報社会の進展が生む市民の不安や不利益等の社会問題について情報の受け手側と発信側、あるいは情報との間の「トラスト」形成の在り方の問題と捉えている。本稿では、デジタルトラスト、デジタル・ソーシャルトラストをめぐる近時の問題の中から、その一端である選挙に関連する問題を紹介し、米国等におけるディスインフォメーションやAI利用に関する法規制の動きについて検討する。

 ファクトチェック,デジタルトラスト,ディスインフォメーション,人工知能,偽情報
 プレゼン資料(11/1版)(PDF:3.3MB)
17:45~17:50
閉会挨拶
松本 多恵 (新潟大学)
17:50-18:10
休憩・会場移動
18:10-19:30
懇親パーティ

※会費制:3,000円(当日受付にて申し受けます)

・司会:山田 久仁 (富士通)
・乾杯:北口 善明 (東京科学大学)
・歓談
・中締め:副会長 高木 亮治(JAXA)

講演者

自然言語処理による欺瞞と広がりの検出
生成AI時代のフェイクニュース対策

lecturer
狩野 芳伸 (Kano Yoshinobu)
静岡大学 情報学部 准教授
[略歴]
2001年東京大学理学部物理学科卒、2003年東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士課程修了、2007年同博士後期課程満期退学、博士(情報理工学)(東京大学、2011年)。同特任研究員、JSTさきがけ研究者等を経て、2014年に静岡大学学術院情報学領域 准教授(現在に至る)。人工知能学会代議員・論文誌副編集長、情報処理学会・言語処理学会各正会員。専門分野は自然言語処理とその対話・医療・政治・法律各分野における応用。本講演関連の外部資金として、セコム科学技術振興財団 特定領域研究助成 情報セキュリティ分野「SNSにおける欺瞞とその広がりの自動検出・推測と政治学・社会学的分析および予防的介」研究代表者、科学技術振興機構創造的戦略研究推進事業さきがけ「文理融合による人と社会の変革基盤技術の共創」領域「社会精神状態と世論形成過程のシミュレーション」研究代表者など。

ディープフェイクの実態と対策
計算社会科学の見地から

lecturer

笹原 和俊(Sasahara Kazutoshi)
東京科学大学環境・社会理工学院 教授(※10/1~)
[略歴]
2005年東京大学大学院総合文化研究科修了。博士(学術)。名古屋大学大学院情報学研究科助教・講師、東京工業大学環境・社会理工学院准教授・教授を経て、現職。国立情報学研究所客員教授。2009年カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員研究員、2016年インディアナ大学客員研究員。2016?2020年JSTさきがけ研究者。
[研究分野、研究テーマ]
計算社会科学。特に、フェイクニュースやディープフェイクの科学。
[所属学会、受賞歴、著書など]
  • 計算社会科学会
  • 人工知能学会
  • 映像情報メディア学会 ベストアーティクル賞,2023
  • 公益財団法人電気通信普及財団 第38回電気通信普及財団賞(テレコム学際研究賞),2023
  • 第2回NTTデータTwitter Innovation Contest 最優秀賞・日立製作所特別賞,2019
  • 笹原和俊(共著)『ネット世論操作とデジタル影響工作』,原書房,2023
  • 笹原和俊(単著)『ディープフェイクの衝撃 AI技術がもたらす破壊と創造』PHP研究所,2023
  • 笹原和俊(単著)『フェイクニュースを科学する 拡散するデマ、陰謀論、プロパガンダの仕組み』,化学同人,2021

インターネットに信頼をもたらす偽情報対策技術
~偽情報の検知・評価・システム化~

lecturer
山本 大
富士通株式会社 富士通研究所 データ&セキュリティ研究所 リサーチディレクター
[略歴]
2007年(株)富士通研究所に入社。2011-2012年ベルギー ルーヴェン・カトリック大学客員研究員。2019年(株)富士通研究所主任研究員。2023年より現職。近年はゼロトラスト時代の新たなトラストアーキテクチャである「Trust as a Service」や、真偽判定支援など偽情報対策技術の研究開発に従事。博士(工学)。
[研究分野、研究テーマ]
  • 偽情報対策、デジタルトラスト
  • ネットワークセキュリティ
  • 暗号実装、ハードウェアセキュリティ
[所属学会、受賞歴、著書など]
  • 電子情報通信学会 情報セキュリティ研究会 専門委員(2019年~現在)
  • 電子情報通信学会 暗号と情報セキュリティシンポジウム SCIS論文賞(2015年)受賞
  • 令和5 年度関東地方発明表彰 発明奨励賞 受賞

デジタルトラストの現状と課題

lecturer
湯淺 墾道 (YUASA Harumichi)
明治大学専門職大学院ガバナンス研究科教授
[略歴]
青山学院大学法学部卒業。九州国際大学教授・副学長、情報セキュリティ大学院大学教授・副学長をへて2021年より現職。明治大学学長室専門員、日本サイバー犯罪対策センター(JC3)理事、JPCERT/CC理事、科学技術振興機構(JST)社会技術開発センター(RISTEX)プログラム総括、日本学生支援機構CIO補佐官などを併任。
[研究分野、研究テーマ]
  • 電子政府
  • 個人情報保護、プライバシー保護
  • サイバーセキュリティ
[所属学会、受賞歴、著書など]
  • サイバーセキュリティ法制学会副理事長
  • 情報処理学会(2024年度山下記念研究賞)
  • 著書『情報化社会の政治と制度』『被災地から考える日本の選挙』(共著)ほか