木下まゆみ
 「日本の国宝、最初はこんな色だった」 小林 泰三(著)光文社新書
 シャーロック・ホームズの話と似ています。本書で扱っているのは、デジタル復元の技術を用いた、色褪せた日本画の「復色」ですが。しかし、細かい現状分析から、事実の断片を推理の糸でつないでいくプロセスは全く同じ。違うのは、推理の対象です。探偵は犯人を推理します。では芸術の復元家は何を推理するのか?当時の人々がどのように美術品を楽しんでいたのか、その息づかいです。そして、その息づかいが今の私たちと同じであることにたどり着きます。今の人がマンガを楽しむように、昔の人は日本画を楽しんでいたのでしょう
 「ゼロからトースターを作ってみた結果」 トーマス・トウェイツ(著)新潮文庫
 無意味、だけどめっちゃ楽しそう!
 「定職をもたない息子への手紙」 ロジャー・モーティマー、チャーリー・モーティマー(著)ポプラ社
 全然泣けません。ただひたすら、日常の出来事がこれ以上ないくらい皮肉と絶望感たっぷりに書かれているのみ。ですが、本の半分もいかないうちに、このお父さんが大好きになりました。こんな手紙をもらえるなんて、いいなあ。