#本棚から一冊では、With Youさいたま職員のおすすめ本をご紹介します。
「国際女性デー」関連の本
3月8日は国際女性デー(International Women’s Day)でした。世界中で様々なイベントが開催され、多くのメディアで取り上げられました。
今回のBookmarkでは、世界中の女性のスピーチやインタビューを掲載した図書をご紹介します。
①だから私はここにいる : 世界を変えた女性たちのスピーチ
②話すことを選んだ女性たち : 60人の社会・性・家・自立・暴力
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言葉の力を感じ取ることのできる一冊 本書は19世紀初頭から現代にいたるまでの女性によるスピーチが54本収録されています。女王エリザベス1世にはじまり、元奴隷、作家、科学者、建築家、民俗学者、俳優、奴隷廃止・女性解放運動家、判事、政治家など、さまざまな分野で活動した(している)女性たちのスピーチは、どれも強い信念に貫かれた情熱的なものばかりです。 前書きには、「このコレクションに登場する女性たちは、いくらそうであってほしいと私たちが望もうとも、ヒロインでも聖人でもない。実在の人物であり、妥協や失敗、難しい決断をしてきた政治家であることも多い。(中略)それでも本書に掲載したスピーチは、ある特定の瞬間をとらえ、その時代の不満や願望を後に続く世代のために結晶化させ、感動とインスピレーションを与えている」とあります。 本書は女性の権利と尊厳を求める闘いが始まった1830年代から現代に向かって進んでいく構成になっているため、彼女たちのスピーチはどれもその時代の社会的・政治的な動きを色濃く反映しています。通して読むことで、国籍も人種も職業もばらばらに思える彼女たちのスピーチに共通項があること、そしてそれらのスピーチは互いに関連し、つながりがあることが見えてくるはずです。 1830年代はようやく女性が演壇に立つようになった時期で、それまで公の場で女性が語るということはほとんどなかったといいます。ほぼ男性のみで占められた公共の場で、彼女たちは強い信念と情熱を持って言葉を発してきました。スピーチは一部抜粋された形で掲載されていますが、全文を調べてみることで、新たな発見や学びが得られるかもしれません。言葉の持つ力、そして彼女たちの生き方に勇気づけられる一冊です。
彼女たちは、話を聞いてもらう必要があった。 ウクライナ出身の映像ジャーナリストのアナスタシア・ミコバと、フランス生まれの写真家で映像監督のヤン・アルテュス=ベルトランは、女性たちにインタビューをおこなった際に、堰を切ったように語りだす姿を見て女性たちの話を聞くべきだと悟ったという。そこで「ウーマン・プロジェクト」を立ち上げ、世界50の国・地域で2000人へのインタビューを実施し、映画と書籍にまとめた。本書は、そのうちのおよそ60人のインタビューを掲載した書籍『Woman』の日本語訳である。 現代社会で「女性である」とはどういうことなのか。無名の個人から大統領まで、立場も境遇もさまざまな女性たちの声は一つとして同じものはないが、世界のあらゆる場所で女性たちが葛藤を抱えながら生きている姿が見えてくる。 特に強く印象に残ったのは、暴力を受けている女性が「自分が受けているのは暴力だ」と認識するまでに時間がかかっているケースが多いということ。政治など公的な領域の改革も大事だが、家庭内での男女の対等でない関係や少女への教育など私的な領域の改革が必要だと感じた。自分の権利について学ぶことなく、理不尽な扱いを受けている女性はまだまだ多い。だからこそ、女性たちがそれまで誰にも話したことがない秘密を打ち明けることの意味はとても重い。 語る女性の強い意思を写し取った写真が魅力的だ。若い女性は情熱的で、年配の女性は堂々として自信にあふれている。遠い国や地域に住む女性たちがまるで側にいるように感じる。 各章には統計データ、関係する論説等も収録してあり、理解を助けてくれる。ぜひ手に取って、彼女らの物語に耳を傾けてほしい。You Tubeで見られる20分ほどの動画では、彼女たちのエネルギーがより強く感じられる。 映像英語版:
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① |
著者・出版社・出版年 |
アンナ・ラッセル/著、カミラ・ピニェイロ/絵、堀越英美/訳 |
請求記号 |
280/ダ | |
② |
著者・出版社・出版年 |
アナスタシア・ミコバ、ヤン・アルテュス=ベルトラン著、清水玲奈訳 |
請求記号 |
367.2/ハ |
元文部大臣で日本ユニセフ協会会長の赤松良子さんが逝去されました。戦後日本女性の地位向上にご尽力された「履歴書」をご紹介します。
男女平等への長い列 : 私の履歴書
男女雇用機会均等法の制定から38年 列はまだ続いていく 2月7日、元文部大臣で日本ユニセフ協会会長の赤松良子さんの訃報が発表された。享年94歳。本書は、赤松さんが2021年末に日本経済新聞朝刊に連載した「私の履歴書」を大幅加筆のうえ書籍化した一冊である。諸外国に比べ30年は遅れた日本の男女格差への取組を世界標準に近づけるべく先頭に立ってきたパイオニアの半生から、戦後日本の女性の地位向上の歴史を振り返ることができる。 赤松良子さんが女性活躍に残した功績は計り知れないが、「私の仕事の中で最も大きなもの」と自身でも評していたのが、婦人局長として制定に奔走した男女雇用機会均等法である。条文の多くが努力義務にとどまり、労働側の反発も強かった上に女性側からは「実効性に欠ける手ぬるい法案」と批判されたが、「内容が不十分でも、できた法律を育てればいい」と願ったとおり、同法は1985年5月に成立後、改正を重ねて今日の女性活躍推進の礎となっている。 文部大臣を務めた際には、旭日章の受章が男性のみであることや、甲子園の高校野球全国大会でベンチに女子マネジャーが入れない点などに疑問を呈し、根拠のない男女差別の見直しを推進した。退官後は、経済分野よりさらに遅れる政治分野の女性参画に力を入れた。 わが国の女性の地位向上は、まだまだ道半ば。赤松さんは本書の出版にあたって読みやすく整理し、年表やデータ、法律の条文なども追加した。日本の女性たちが忍耐強く闘ってきた歩みを若い世代に伝えたいという想いが伝わってくる。読み終えると、「あなたも、男女平等の実現のためのこの長い列に加わって」と呼びかける声が聞こえてくる。ぜひ多くの人に読んでほしい一冊だ。 赤松良子さんのこれまでのご尽力に深く感謝いたしますとともに、心から哀悼の意を表します。 |
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著者・出版社・出版年 |
赤松良子/著、日本経済新聞出版、2022 | |
請求記号 |
289/ア |
気になる本
With Youさいたま職員がちょっと気になるテーマの本、話題になりそうな内容の本をご紹介します。
ぜんぶ体型のせいにするのをやめてみた。
心が痩せるダイエットとは インフルエンサーとしてダイエットや承認要求に追い詰められた著者が、少しずつ自分を取り戻していくまでを描いたエッセイ&コミックです。 冒頭の2万人アンケート「ダイエットを始めた理由はなんですか?」は、ダイエット経験者にとっては共感できるものばかり。当時12万人を超えるフォロワーがいたことからも、多くの人の心にとまり、支持されていたことがうかがえます。 「友達関係がうまくいかないのも、成績がなかなか伸びないのも、部活の他の子のほうが先輩に気に入られているのも、ショッピングに行っても似合う服がないのも、ぜんぶぜんぶ、体型のせい。」 成分表を見ないと食べられない、体重計依存症、SNS上の自分とリアルの自分との乖離など、周囲の何気ないひとことから始めたダイエットが著者を苦しめます。「自分を大切にするための20のこと」は、このような体験をした著者だからこそ発信できる言葉で、自分を見失いそうになった時のお守りとして傍に置いておきたくなります。 また、おわりの2万人アンケート「自分の好きなところはどこですか?」にも、明るく前向きで「自分を愛する」ヒントが詰まっています。体型について悩んでいる方、今の自分を受け入れることを難しく感じている方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。 |
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著者・出版社・出版年 |
竹井夢子/著、大和書房、2021 | |
請求記号 |
595/ゼ |
世の中を知る、考える、変えていく : 高校生からの社会科学講義
社会科学の入門書として 「社会科学」とは、「文系」といわれる学問分野の中で、主として社会のことを考える分野の総称です。本書では、「経済学」「政治学」「法学」「社会学」の4つの学問分野について、それぞれの特徴や着眼点がわかりやすく紹介されています。また、「環境」「貧困」「テクノロジー」「ジェンダー」という4つの具体的なテーマについて、各分野の専門家がアプローチや課題について解説しています。 同じテーマでも、分野により課題への切り口や考え方には多くの違いがあることがわかります。たとえば、「ジェンダー」の項目では、経済学は男女間の賃金格差、政治学は女性議員の少なさ、社会学はそもそも性別とは何か、法学は女性の再婚禁止期間を着眼点に論を展開しています。 入門書にふさわしく、著者一人ひとりがなぜこの学問分野を志したかが紹介されているほか、読書案内として関連図書が豊富に紹介されています。また、本の小口に印が付いているので、自分の興味のある分野から読んでみることもできます。 大学の学部や専攻選びに悩んでいる高校生に、また、世の中の問題に関心があり、解決方法を考えてみたいすべての人におすすめの一冊です。 |
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著者・出版社・出版年 |
飯田高・近藤絢子・砂原庸介・丸山里美/編、有斐閣、2023 | |
請求記号 |
301/ヨ |
ミステリと言う勿れ
グサッと心に刺さる名言から勇気を。 第67回小学館漫画賞一般向け部門を受賞し、ドラマ化、映画化もされた作品です。分類としては「ミステリ」ですが、男女共同参画の視点がちりばめられ、社会の”当たり前”に疑問を投げかける作品となっています。 私たちは幼いころから「女性だから」「男性だから」こうしなければいけない、こうしてはいけないと、さまざまな社会的なメッセージを受けながら育ちます。こうした考え方に影響され、知らず知らずのうちに、男女の固定観念をもってしまう環境の中で育っています。 「子どもを産んだら女性は変わる」、「家事と子育てだけやっていれば楽でいいな」などといったセリフを聞いたことはありませんか?「なぜバージンロードを歩くのは母親とではなく、父親となんだろう?」「どうしていじめられてる方が逃げなきゃならないんだろう?」「なぜ人を殺してはいけないのか。」と思ったことはありませんか? 本作は、心理学を学ぶ大学生の主人公が、さまざまな事件に巻き込まれながら、独自の価値観と持論で、淡々と、会話で謎を解き明かし解決していく作品です。しかし、このような既成概念に縛られて苦しんでいる人にとって勇気を与えてくれる作品となっており、主人公が放つセリフは、思わずはっとさせられる内容ばかりです。物事の見え方が変わる大切なことに気づかせてくれるヒントが見つかるかもしれません。 |
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著者・出版社・出版年 |
田村由美/著、小学館、2018 | |
請求記号 |
726.1/ミ-1~8 |
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