#本棚から一冊

#本棚から一冊では、With Youさいたま職員のおすすめ本を紹介します。

「おとなの性教育2023」テーマの本


 2023年10月21日に、講演会「おとなの性教育2023~自分のからだのことは自分で決める!『性と生殖に関する健康と権利』~」を開催します。(講演会の申込受付開始は、9月22日(金)の予定)
 今回のBookmarkでは、この講演会にちなんだ図書をご紹介します。
 また、情報ライブラリーでも、関連図書を展示しております。貸出しもしていますので、ぜひ、お越しください。

①わたしの心と体を守る本 マンガでわかる!性と体の大切なこと

②マンガでわかる  子どもと一緒に楽しく学ぶ性教育














「自分を大切にする」ってどういうこと?
  著者の遠見才希子さんは産婦人科医。大学在学中から性教育活動を開始し、「えんみちゃん」のニックネームで全国1000か所以上の学校などをめぐり、正しい性の知識だけでなく、コミュニケーションを大切にした講演会を行っています。(With You さいたまでも10月21日に「おとなの性教育」でご講演いただきます!)
 そんな著者が子どもたちに向けて書いたのが、『わたしの心と体を守る本~マンガでわかる!性と体の大切なこと~』。本書では、思春期における身体の変化や性的同意、妊娠・出産、避妊の方法、性感染症などの生殖に関する知識だけではなく、「好きな人ができた!」「人を好きになる&付き合うってどういうことなんだろう?」というような悩みにも丁寧に触れられています。また、学校での友たちとの関係、コミュニケーションの方法や、SNS・インターネットとどうつき合えばいいかなど、今の社会を生きる子どもたちに必須とされるような知識も学べるようになっています。 この本をお守りのようにそばに置き、気になることや困ったことがあった時に読み返してみると、悩んでいるのは自分だけじゃないんだと安心できるでしょう。そして本書を読むことで、自分は世界にたったひとりの大切な存在で、他者もまた同じようにかけがえのない存在なのだと、お互いを尊重することが大事だと思えるようになるはずです。
 

 大人向けには、同じく遠見才希子さんの『マンガでわかる 子どもと一緒に楽しく学ぶ性教育』がおすすめです。マンガとイラストでゆるっと「包括的性教育」について学べます。
 国際的にスタンダードなユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の「包括的性教育」の考えに基づいて、子どもにいつ、どのようにして、性について教えたらいいのか、またそのためには子どもとどんな関係を築けばいいのか、漫画を中心にわかりやすく教えてくれます。非常に読みやすい一冊です。Q&A形式の悩み・相談コラムなども掲載されていますので、同じような悩みを抱えた親たちの存在に気持ちが軽くなるかもしれません。
 性教育に手遅れはないと遠見才希子さんは書いています。大人は「教えなければ!」と意気込まずに、まずはコミュニケーションを大切にして、子どもと一緒に同じ目線で考えていく。そういうスタンスが子どもの「健康で幸せな未来」へとつながっていくのではないでしょうか。
 

 ①

著者・出版社・出版年

遠見才希子/著、アベナオミ/漫画、碇 優子/イラスト
KADOKAWA・2022
 

請求記号

367.99/ ワ
     
 ②

著者・出版社・出版年

遠見才希子/著・荻並トシコ/マンガ・ナツメ社・2023
 

請求記号

267.99/マ

 

安全、同意、多様性、年齢別で伝えやすい!ユネスコから学ぶ包括的性教育
親子で考えるから楽しい!世界で学ばれている性教育

なぜ「性」について学ぶことが必要なのか?
 「性」について話すのは恥ずかしいことで、エッチなことだと思っていませんか?もしくは、「性教育=セックスのしかたを教える教育」だと思っていたりしませんか?
 本書はそんな人にこそ、ぜひ手にとって欲しい一冊です。残念ながら、日本の多くの大人たちは「性」についてきちんと学んだ経験がなく、子どもから「性」について質問をされた時、ついごまかしたりしてしまいがちだといいます。でも、「人間はどこからきたの?」と聞かれた時から性教育は始まっているのです。
 本書はユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が編集した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(2009年)で示されている「包括的性教育」について、子どもから大人まで一から学ぶことができる構成になっています。(表紙に書いてあるように、はじめてでも大丈夫!)
 世界では「包括的性教育(包括的セクシュアリティ教育)」という考え方が主流になっており、思春期におけるからだの変化や、月経や射精、妊娠・出産、避妊などの生殖に関わる知識だけではなく、最新の科学的根拠にもとづいて、人権とジェンダー平等、多様性の尊重を大切にする性教育が行われています。
 本書では、この一見難しそうに聞こえる「包括的性教育」について、多数のイラストや漫画をまじえながら、大人と子ども、それぞれに向けて(特に大人に向けては、子どもの年齢別に、どのような伝え方をすればいいのか)わかりやすく説明されています。本書を読むことで、「性」を学ぶことは人間の生き方、生涯そのものにつながっているのだと気づかされるのではないでしょうか。
 思い込みや偏見を捨て、大人も子どもも一緒に、「性」について学んでみませんか? 
 

著者・出版社・出版年

構成・文 上村彰子 監修 田代美江子 イラスト・まんが 大久保ヒロミ・2022
 

請求記号

367.99/オ

 

50歳からの性教育

大人こそ「性」についての学び直しをしよう
 本書は書籍を性教育の学校に見立て、第一人者である村瀬幸浩さんを校長として、研究者や産婦人科医、弁護士、精神保健福祉士など5人の専門家が特別授業を行うという趣向になっています。更年期(男女とも)、セックス、パートナーシップ、性的指向と性自認、性暴力(加害者にならないために)、ジェンダーと、他の年代でも学んでおきたいテーマばかりですが、特に50歳からの人生を生きる人を対象として書かれています。なぜ、「50歳」という年齢なのでしょうか。
 性について学ぶ機会がなかったこの世代が、生殖の性も終わる人生の後半期に突入するにあたって、自分自身を見直し、パートナーとの関係を見直すことは避けられないからです。どの授業にも「自分の性と他者の性を尊重することで人生は豊かになる」との考えが通底しており、人生の中盤戦での学びを伴走してくれます。自分の関心に近い項から読むのも良いと思います。
 巻末には女性学研究者の田嶋陽子さんと村瀬校長の対談が掲載されています。80代のお2人は女性差別の強い社会の中で育ち、男女が対等でない社会に違和感を覚え立ち向かってきました。それぞれが50歳の時に転機を迎え、達した現在の境地は、まさに50歳からの人生の学び直しのモデルと言えます。人生100年を自分らしく生き抜こうと語り合う先輩たちに励まされます。
 人生の折り返し地点を迎えた世代にとって性の知識をアップデートするための必携の一冊です。

 

著者・出版社・出版年

村瀬幸浩、高橋怜奈、宋美玄、太田啓子、松岡宗嗣、斉藤章佳、田嶋陽子著・河出書房新社・2023
 

請求記号

376.9/ゴ

 

気になる本


 With Youさいたま職員がちょっと気になるテーマの本、話題になりそうな内容の本を紹介していきます。

いいね!ボタンを押す前に:ジェンダーから見るネット空間とメディア

知っておきたいSNSの基礎知識
 スマートフォンの普及からわずか20年たらず、手のひらに収まるこの機器は、誰もが簡単に社会に向け発信者になることを可能にしました。#Me too(性暴力とハラスメントの被害を投稿)や #Ku too(職場でのヒール・パンプスの強制を変えたいとする投稿)といったSNSのつぶやきは、男性中心の社会で見過ごされてきた問題を明らかにし、社会を動かす原動力となりました。一方で、日々SNSで繰り広げられる誹謗・中傷などによって多くの人が傷つき、人の命が奪われる結果ももたらしています。
 この本は、誰もが容易に発信者となれる時代に、人を傷つけない・無意識に差別しないために気を付ける点等を考えることができる一冊です。

 人々に分断をもたらすネット空間の構造とは?萌えキャラ・美少女キャラと表現の自由の論争とは?なぜSNSではヘイト(偏見・憎悪)や差別言説、ミソジニー(女性嫌悪・女性蔑視)や偽情報の拡散といった問題が起きやすいのか?など、ネット空間で起こる様々な事柄をジャーナリスト・研究者・エッセイスト・報道関係者などがジェンダーの視点で解説し、解決に向けた取組なども紹介しています。
 気づくとスマホを手にし、ついSNSを見てしまうという方!各章が独立した構成になっていますので、ぜひ興味のある章からページをめくってみませんか?

 

著者・出版社・出版年

李美淑ほか著・亜紀書房・2023
 

請求記号

007.3/イ

 

1980年、女たちは「自分」を語りはじめた フェミニストカウンセリングが拓いた道

「個」を問うフェミニストカウンセリングの運動と実践の軌跡  
 アメリカでフェミニストセラピィに出会った筆者が日本で初めて女性による、女性のためのフェミニストカウンセリングルームを開いたのは1980年のこと。その後、筆者はフェミニストカウンセリング講座をスタートさせた。東京での最後の講座を受講した自分も含め、参加者は「夫が」「家族が」と口にするたびに筆者から「あなたはどう感じたの?」「あなたは誰?」と厳しく問い詰められた。その頃の女性たちは「私」を主語にして語ることさえ難しかった。厳しい指導に鍛えられ、私たちは「語り」の重要性に魅了された。仲間たちはその後、各地に開設された女性センターの相談員に採用されていった。
 巻末に収録されている筆者との対談で、上野千鶴子氏はフェミニストカウンセリングの限界を容赦なく指摘する。DVも男女共同参画もハラスメントもなかった時代に、私たちは筆者から「個人的なことは政治的なこと」というフェミニズムの主張に出会い、女性の病は明らかに社会モデルに依拠していることを学んだ。
 特に暴力問題においてフェミニストカウンセリングの活動は大いに貢献した。一方で、相談の分析から浮かび上がるジェンダー課題を政策決定につなげる作業にはもっと挑む必要があったのではないか。筆者が本書をまとめたのは、この残された課題を明らかにして、フェミニストカウンセリングの新たな船出を期待するからでもある。次世代につなげるためにも、本書はフェミニストカウンセリングの実践を知らないという人たちにこそ是非読んでもらいたい。
 

著者・出版社・出版年

河野貴代美・幻冬舎・2023
 

請求記号

143.5/セ

 

ハッシュタグだけじゃ始まらない東アジアのフェミニズム・ムーブメント

東アジアのフェミニズム・ムーブメントにパワーを
もらう
 ハッシュタグと聞いてすぐに思いつくのは、セクハラや性的暴行などの性犯罪被害の体験を告白・共有する際にSNSで使用される「#ME Too」運動である。#(ハッシュ)を付けてSNSに投稿し、ともに連帯して世の中を変えていこう、という動きは世界中に広がり、今や社会運動の重要なツールとなっている。
 確かにこの運動方法は拡散力は強いが、オンライン上だけの発信や連帯で制度や社会を変えていくには限界がある。運動が持続性をもつためには、オフラインでの地道な、時に強い抵抗を受けながらもひるまないアクションが不可欠だ。そこで本書は「ハッシュタグだけじゃ始まらない」と呼びかける。
 5人の編著者は、中国・韓国・台湾・香港をフィールドとする研究者や活動家で、社会学、フェミニズム研究などを専門とする。いずれもかつて日本が植民地化した国、侵略した地域である。東アジアとして歴史的、政治的に緊密に関係し、共通点も多くあるが、差異もまた大きい。それぞれの地域の不平等な関係の中で女性たちが連帯し、性差別や性暴力を告発して社会に立ち向かっていく姿は、日本に住む私たちにも「何かできるかもしれない」という力を届けてくれる。
 本書が魅力的なのは、盛り込まれた多くの写真である。ページをめくるたびにSNSでは感じることができない生身の身体や表情に圧倒される。それらはオンラインだけではなく、オフラインで声をあげることが人をつなげていくという編著者たちのメッセージを伝えるものとなっている。同時代の色々な地域のフェミニズム運動を知り、理解を深めることの重要性を教えてくれる貴重な一冊だ。
 

著者・出版社・出版年

熱田敬子、金美珍、梁・永山聡子、張瑋容、曹曉彤 編著・大月書店・2022
 

請求記号

367.1/ハ

 

傲慢と善良

結婚・婚活に迷ったときに読んでみてほしい一冊
 前半は、西澤架(にしざわかける)、30代後半男性が主体である。架は東京育ちで、恋愛経験も豊富なために傲慢になり、婚期を逃している2代目社長。そして婚活アプリで知り合ったのが、「良い子」である善良な坂庭真美、30代。その真美が、架と婚約直後にストーカー騒動とともに失踪する。架がその謎を解くため、真美の地元前橋で結婚紹介所の所長など所縁の人物に出会っていく。
 後半は、真美が主体となり、東京で一人暮らしを始めた理由や失踪の謎が明かされ、その後の震災ボランティアを通し出会った人々との日々が語られる。
 無知、未熟さからの傲慢、善良は傲慢と紙一重。真美は人の顔色を窺いながら人に従い、親の庇護の元で親の狭い価値観の中、自分で選択する重圧や責任を取る覚悟を他人に任せているので自分がないが、その自覚がなく傲慢となる。しかし婚活の失敗により今までの価値観を捨てる勇気と覚悟を持ち、生き方を変える一歩を踏み出す。
 真美の失踪の謎が解けた時、「この世の中に『自分の意志』がある人間が果たしてどれだけいるだろう。『自分の意志』で選んだとしても、何か大きな力で選ばざるを得なかったものもあるだろう」という傲慢ではなく、真美に寄り添った架の思いが書かれている。
 真美が何か大きな力により、結婚した/しない、子どもを産んだ/産まないという選択に優劣をつけていたこともある。その大きな力に飲まれそうな時、東京で出会った外国人の同僚から「人生はあなたの好きなことでいいの。恥ではない」と言われ、今まで何かに興味を持てない自分をバカにされているように思ってきたが、バカにするその人の方に問題があると気づいた。さらに架の女友達が傲慢に失踪の謎に迫ってきた時も「この人は嫌いって、自分で認めていいんだ」と、真美は自分を取り戻していく。
 結婚・婚活をしようとしている人、その親御さんにだけではなく、「どう人生を選択していくのか」を考えている人にもお勧めしたい。
 

著者・出版社・出版年

辻村美月・朝日新聞出版・2022
 

請求記号

913.6/ツ


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