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同意って何だろう?自分のきもちと相手のきもち

「同意って何だろう?」これは、誰もがぶつかる疑問ではないでしょうか。
 「好きだから」「嫌われたくないから」「友達なら」「恋人なら」
 こうした言葉を相手にも自分自身にも投げかけながら、気持ちを納得させることはありませんか?
 この本の副題は「包括的性教育に役立つ」です。
 「好き」という気持ちから多くの人が陥りやすい罠に焦点を当て、「好きなのにどうしてすれ違ってしまうんだろう」「こういう経験あるな」という事例を踏まえて、優しく語りかけてくれます。
 そこから見えてくるのは、「人と人との関係は全て対等」であるという人間関係の一番の基本。言葉で気持ちを伝えあうコミュニケーションの延長線上に、「性的同意」があることを改めて教えてくれました。
 日本人の多くは、同質を前提とする共同体の作法から、人と人との距離感を見つめなおす機会がなかなか得られない傾向があるように思います。「相手も同じ気持ちだろう」と考えがちではないでしょうか。「相手は違う気持ち、違う考え」であることを素直に受け入れ、自分も相手も大切に、お互い納得できる関係を築けるといいですね。
 「同意」という意思決定のために、「迷いを受けとめる」「ゆっくり答えを出すことも重要」という最後の言葉も印象的でした。
 中学生、高校生をはじめ、大人の方にもぜひ手に取っていただきたい一冊です。
だれもが大切にされる社会のために。
 

著者・出版社・出版年

アルバ編著・金の星社・2022.3
 

請求記号

367.99/ミ-3

 

言葉を失ったあとで

言葉を一緒に探すー困難さを抱える人への寄り添い方
 心理の専門家(信田さよ子氏)と女性支援にかかわるノンフィクション作家・研究者(上間陽子氏)の対談。「厳罰化は何も解決しない」「女性の依存症の特異さ」など、見出しを見るだけでも興味をそそられる。カウンセラーというのは言葉なくして成り立たない生業だ。その生業のベテランである信田氏でさえ、性被害を語る言葉を聞けば言葉を失ってしまうことがあることに圧倒される。
 これまで公開されてきていない信田氏の個人的な経験が開示されていることも興味深い。カウンセラーが自己開示する必要はないと考えている氏なので、これまで私も彼女のプライバシーをほとんど知らなかったが、駐在員の妻としての無力感、医師を目指したが一転、女性のアルコール依存問題を扱うカウンセリングルーム勤務への転身、など彼女が自ら語る本人の姿は彼女の仕事に対する真摯さが伝わり、彼女への信頼を強化するものだった。
 一方、上間氏からは調査対象へのインタビューで大事なことは「いい時間を一緒に過ごす」ことという答や、「沖縄出身なんだから沖縄のことをやれといわれ反発しつつも「私にしかできないという思いもある」との言葉が語られる。調査研究対象に対し彼女が愛情をもって接しているからこその言葉と感じ、好印象を持った。
 両者に共通するのは「我がことのように聞く」「言葉を一緒に探す」「カウンセラーだけは味方にならなければならない」という姿勢である。本書を読むことは言語化するのが難しい体験を持つ人への寄り添い方について、大きな学びになるだろう。
 

著者・出版社・出版年

信田さよ子, 上間陽子著・筑摩書房・2021.11
 

請求記号

367.3/コ

 

「女の痛み」はなぜ無視されるのか?

痛いことは痛いと言ってもいい。自分が感じる苦痛について声を上げよう。
 自分の出産時の体験をきっかけに、筆者は女性の痛み、特に有色人種の訴えが軽視される問題を提起する。
 多くのデータや証言をもとに、世界中で常に男性が女性の痛みの限界点を決めていることを明らかにする。
 女性は痛みを訴えれば「ヒステリー」と揶揄され、我慢が足らないと批判されてきた。
 読み進めるうちに、自分もおとなしく無言でやり過ごすしかないと思ってきたことに気づいた。我慢を強いる社会を変えるために、女性自身が痛みの体験を語り、自分の健康の主導権を握ろう、と筆者は最後に呼びかける。
 さらに無視されがちな人々の命を救うため、という強い意志で執筆された本書は、沈黙しがちな私を後押しする一冊となった。
 

著者・出版社・出版年

アヌシェイ・フセイン著; 堀越英美訳・晶文社・2022.10
 

請求記号

498.02/オ

 

声なき女性たちの訴え 女子刑務所からみる日本社会

社会の歪みが現れる刑務所の実情から、男女共同参画社会を考える
 全国の刑務所に収容された受刑者のうち女性は1割程度。職員も施設数も男性に比べ圧倒的に少ない。どうしても男性中心の運用となり、出産など女性固有の健康問題への配慮に欠けている。この実情を知った筆者らは医療・福祉や司法関係者らとともに「女子刑務所のあり方研究委員会」を発足し、やがて国と二人三脚で刑務所と地元自治体の協力関係を築いていった。その熱意と連携の姿に感銘を受けた。
女性受刑者が問われる罪は窃盗と覚せい剤取締法違反が全体の約8割を占める。その背景には、成育歴や異性関係が深く関わっており、摂食障害や薬物依存に陥って犯罪に結びつくケースも多いという。再犯防止に向けた施策は道半ばだが、「誰にとっても地続きの問題という理解が必要」との言葉を胸に刻んだ。
 

著者・出版社・出版年

堂本暁子著、名執雅子編著・小学館集英社プロダクション・2021.11
 

請求記号

326.52/コ


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