#本棚から一冊では、With Youさいたま職員のおすすめ本をご紹介します。
「男女共同参画週間」テーマの本
6月23日から29日までの1週間は、男女共同参画週間です。
With Youさいたま(埼玉県男女共同参画推進センター)では、作家のアルテイシアさんを講師にお招きし、講演会を開催します。
今回のBookmarkでは、この講演会にちなんだ図書をご紹介します。
生きづらくて死にそうだったから、いろいろやってみました。
ジェンダーの呪いから自由になろう! 「幼い頃から生きづらくて死にそうだった」という著者・アルテイシアさん。しかし現在は、生きる気まんまん。「腕白でもいい、長生きしたい」と思えるようになったそうだ。本書はアルテイシアさんが、その境地に辿り着くまでの経緯や、タイトルのとおり、生きづらさを解消するために「いろいろやってみた」ことが、親しみやすいユーモア溢れる筆致で書かれている。 特に本書は親子関係に悩む人におすすめしたい。というのも、アルテイシアさん自身が長年「毒親の呪い」に悩まされ続けてきたからだ。アルテイシアさんのご両親は、ともに遺体で発見され、しかも死後、借金取りがやってきて五千万もの借金を背負わされそうになった(父親に脅されて保証人にさせられていた。)。 若さと美しさに固執し続け、拒食症で身体が弱り切って亡くなった母親。会社経営に失敗し、多額の借金を抱え、飛び降り自殺をした父親。アルテイシアさんはご両親が亡くなった時、母親は女らしさの、父親は男らしさの、「ジェンダーの呪いに殺されたんだな」と思ったという。フェミニズムに出会い、ジェンダーの視点から親の人生を見つめ直すことで、アルテイシアさんは「毒親の呪い」から解放された。されたことは許せないし、トラウマは完全には消えないけれど、憎しみや苦しさは軽くなった。本書には「毒親から逃げるための法律知識」(弁護士・太田啓子さんとの対談)なども掲載されているので、困った事態になった際の参考にしてほしい。 また本書には毒親の呪いの他にも、自己肯定感の呪い、仕事の呪い、恋愛・出産の呪い、年齢の呪い……などなどヘルジャパンを生き延びるためのヒント(ライフハック)が多数散りばめられている。アルテイシアさん独特の軽快な文章、痛快なギャグの数々に、膝パーカッションすること間違いなしだ。 アルテイシアさんも前書きに書いているように、この本を読めば世界がキラキラ輝き始めたり、人生バラ色のイージーモードにはならないかもしれない。でも、生きづらさはちょっと減って、前より楽に呼吸ができるようになるかもしれない。アルテイシアさんの本を片手に、みんなでジェンダーの呪いを滅ぼして、このヘルジャパンを一緒にサバイブしていきまっしょい!! |
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著者・出版社・出版年 |
アルテイシア/著、講談社、2023 | |
請求記号 |
914.6/ア |
ジェンダー史10講
ジェンダーの視点から歴史を読み替える ジェンダー史は、性差は本質的なものではなく、「真理」を規定しうる権力としての「知」により身体的性差にさまざまな意味が付与されて、女/男が歴史的に差異化されていくという認識から出発します。その差異化の過程を把握し、ジェンダーが作りだす構造を解明し、それが歴史のなかで、どう作用して、どのような歴史的帰結につながっていったのかを読み解いていきます。 本書は、ドイツ近現代史・ジェンダー史の第一人者である筆者による女性史・ジェンダー史の入門書です。まず、第1〜3講では導入として、1980年代以降のジェンダーや学問をめぐる時代動向、歴史学方法論の変化と絡ませながら、女性史・ジェンダー史の史学史としての概説が行われます。第4講以降では、歴史叙述と歴史教育、家族史、身体史、ナショナリズムと国民形成、軍事史、戦争、労働、福祉史、戦時性暴力などでの多岐にわたる研究実践が紹介されます。軍隊など女性が不在の領域、あるいはナショナリズム、文化、階級など、ジェンダーに無関係と考えられがちな分野でも、いかにジェンダーに依拠して形成されているかがよくわかります。 筆者は「はしがき」の冒頭で「今では、女性史・ジェンダー史は歴史学のなかで確固たる居場所や市民権を獲得している」と書いています。歴史学においてジェンダーの視点はもはや欠かせないことは、本書が歴史学の10講シリーズの一つとして刊行されたことでも明らかです。歴史は変わらないようで、どんどん変わる。未来を考えるためにたえず学び直していかねば。そう実感できる、刺激的な入門書です。 |
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著者・出版社・出版年 |
姫岡とし子/著、岩波書店、2024 | |
請求記号 |
367.2/ジ |
ジェンダー事典
この1冊でジェンダーに関わる問題を俯瞰する 「女だから」「男だから」と性別で決めつけるのではなく、一人ひとりの個性を大切にするジェンダー平等の達成を目指す動きが国際的に進んでいます。日本でも政治やメディアの場面でジェンダーの用語が使われるようになり、関連するニュースが報道される機会がかなり増えてきました。 ただ、世界との比較をみると、日本でのジェンダー平等の実現はまだまだ遠く、ジェンダーに対する理解も十分とはいえない状況です。そうした状況に応えるべく、本書は刊行されました。 「ジェンダー」は性や身体、政治、経済だけでなく、教育、宗教や芸術など、あらゆる事柄と深く関連しています。本書では、ジェンダーに関するトピック全18章345項目が見開き完結でまとめられていて、好きな項目から読んでいけます。総勢293人のさまざまな分野の専門家による編集・執筆なので、項目に関する議論の状況や参考文献までジェンダー研究の最前線を知ることができます。一方で、ぱらぱらと気軽に読んでいくのもお勧めです。その中で気づくことも多く、ジェンダーが私たちの生活のあらゆる場面に関わる問題であることが実感できます。 これからジェンダーについて学ぶ人も、行政や市民活動でジェンダー視点の理解を深めたい人も、多くの人びとの疑問や関心に応えてくれる一冊です。 |
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著者・出版社・出版年 |
ジェンダー事典編集委員会/著、丸善出版、2024 | |
請求記号 |
367.2/ジ |
気になる本
With Youさいたま職員がちょっと気になるテーマの本、話題になりそうな内容の本をご紹介します。
10代のうちに考えておきたいジェンダーの話
この先の人生においてジェンダーの固定観念にとらわれない選択をするために読む一冊! この本の題名に惹かれて読み始めたところ、「あるある」「わかる」と感じることばかりが書かれていた。この本の著者の言う「10代が直面するジェンダーの問題を、過去・現在、そして未来に向けて考察」し、「自分らしさとは何か、バイアスとは何かを自分ゴトとして考えた先に、多様性を認め合う社会を作るヒントが見えてくる」内容になっている。例えば、教育の現場で早い段階からジェンダー平等が当たり前であれば、人生の岐路に立った時に、「女はこうあるべき」「男だからこれを選べば良い」と言う無意識の思い込みや、子どもの頃から教わって来た言わばルールの様な考え方によって作られる現実に邪魔されることは少なくなるだろう。 以前、幼稚園に通う女の子に「人間の男の子は見かけだけで男の子だと決めるの?」と聞かれた事がある。咄嗟に「それだけではないよ。本人が自分を男の子か女の子かどちらと考えているのかも大事なことだし、見た目だけでは決められないよ。」と答えたのだが、女の子は「そうなのね。見た目だけではないのね。」とすんなり受け止めていた。普段から何かを線引きせずに、そして線引きされずに育ってきたのだろうと思った。親や周囲の大人も多様性を尊重する時代を意識して、その子と関わっているのだろうと感じた。もし、ずっとそうした中で成長していけばジェンダー問題で悩むことは減るはず。社会に出るまでのモラトリアム期間も含めて、さまざまな選択肢を持っていけることだろう。 社会の中にはまだジェンダー差別があちこちに残っているけれど、そういった概念は社会が作り上げて来た規範であって絶対的なものではないということから、この本はジェンダーの固定観念にとらわれない選択をしてほしいという思いが込められた内容になっている。是非、手に取っていただきたい一冊である。 |
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著者・出版社・出版年 |
堀内かおる/著、岩波書店、2023 (岩波ジュニア新書:979) | |
請求記号 |
367.2/ジ |
50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと
身近な政治について考えてみよう! 長いタイトルが印象的な本書。筆者は、相撲・音楽ライターの和田靜香さん。アルバイトを2つ掛け持ちながら働いていたが、コロナ禍で2つともクビになり絶望の淵に立つことに。そんな筆者は、暮らしを通して感じた不安や疑問、生活で感じる個人的な悩みには、政治が深くかかわりジェンダーに係る構造的な問題がある。そして、それを変えていくためには政治分野の男女格差をなくすことが必要だと考える。 世界各国の男女間の格差を示す「ジェンダーギャップ指数」は世界最低クラスの日本。政治分野は特に低い。どうしたら女性の政治家を増やせるのか?筆者が学びを深める中でたどり着いた先が、約20年にわたって男女同数の議会がある神奈川県大磯町。それだけ男女同数の議会が維持され続ける町は他にはない。どうして実現できたのか?女性議員が増えるとどうなる?様々な疑問を解消すべく、大磯町へ幾度も通い、町議会議員をはじめ多くの町民に取材を進めていく。 町のこと、議会のこと、政治のことをカフェで気軽に語りあう女性たち、現役・初代の女性町議会議長、40年にわたって町の問題点を消費者の目で見て調査し提言してきた〈大磯消費者の会〉など、取材に応じた人たちの「語り」からは、女性たちが学び、声を上げ続けてきた大磯町の姿が見えてくる。また、50代でフェミニズムを知ったという筆者の気づきや、振り返りも興味深い。 「個人的なことは政治的なこと」 政治はちょっと苦手という人にも読んでほしい一冊である。 |
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著者・出版社・出版年 |
和田靜香/著、左右社、2023 | |
請求記号 |
367.21/ゴ |
困難を抱える女性を支えるQ&A:女性支援法をどう活かすか
困難を抱える女性支援に女性支援新法を活かすヒント集 女性支援におけるニーズの多様化や生活困窮、性暴力・性犯罪被害、家庭関係の破綻など、女性の直面する問題が複雑化・複合化している現状に対応するため、令和6年4月1日に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が施行されました。 新法に基づき、困難を抱える女性をどのように支えていくかを考えるヒント集です。 第1部では、新法制定の意義や基本理念など基本的な問題の提供、第2部では、「女性支援の担い手」として国や地方自治体、公的支援機関、民間支援団体の役割や支援活動、協同体制についての考察、第3部では、支援の基本姿勢と支援内容について検討する構成となっています。 「BONDプロジェクト」「ぱっぷす」「慈愛寮」「ピッコラーレ」の取組から、女性が様々な困難を抱える様子が見えてきます。 また、官民連携の「国立市女性パーソナル事業」や札幌市の「アウトリーチ型若年女性支援事業」も今後の支援体制づくりの一助となります。 アウトリーチ支援の「Colabo」、若年女性の居場所づくりの「若草プロジェクト」の活動も新法における支援理念に基づく取組として紹介されています。 どのような形でかかわるにせよ、困難を抱える女性支援に興味がある方々にぜひ手に取ってほしい一冊です。 |
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著者・出版社・出版年 |
戒能民江/編著、堀千鶴子/編著、解放出版社、2024 | |
請求記号 |
369.25/コ |
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