With Youさいたまのボランティア「サポートスタッフ」が、With Youさいたま情報ライブラリー蔵書から選んだイチオシ本をご紹介します。
母という呪縛 娘という牢獄
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親の何気ないつぶやきが呪縛になるかもしれません 本書を読んで他人事とは思えなかった。「母という呪縛」・・・もしかしたら知らないうちに、何気ない言動から自分も行ってきてはいないだろうかーそれが読後の最初の印象だった。 本書は2018年1月に起きた実母殺害事件の容疑者との接見と自身の手記をもとに記された作品である。そこには事件が起きるまでの容疑者である娘と被害者となった母親との関係が克明に記されている。 父親は娘が小学6年生のころに仕事を理由に別居し、それ以来、母親と娘の二人暮らしが続いていた。二人で有名テーマパークへ遊びに行くなど、仲の良い親子に見えた二人であったが、物心つくころから母親は娘に厳しい言葉をぶつけており、既に母親による呪縛は始まっていた。娘が成長するにつれて呪縛は次第に激しさを増し、特に受験や進路の場面で、呪縛がやがて家庭内暴力へと発展していく。 娘はなぜ、外に助けを求めなかったのだろうか。その場を逃れなかったのだろうか。高校生の時には数回にわたり家出し、母親による暴力を知った教師が警察への通報を提案しているが、世間体を理由に断っている。大学に進学してからは、母親が孤立しないよう休日は一緒に買い物や旅行に出かけたりするなど、暴力をふるった母親に対しての思いやる気持ちは残している。母親との密接な関係と家庭という閉ざされた空間が孤立を招き、社会から遠ざけ、さらに状況を悪化させてしまったのだろう。 本書の大部分は中高時代から浪人の時期の進学に関わることであり、それは母親の呪縛から逃れられない牢獄のような日々を送る娘の日常を描き、読者はその様相に驚かずにはいられないだろう。しかし、これを単なる事件として片付けてしまうほど単純な作品ではない。 本書紹介の冒頭に、「他人事とは思えない」作品と記した。親の見えないエゴはいろいろな場面で存在するだろう。我が子はこうあってほしい、ほしくない、安全な人生を歩んでほしい等々・・・親の思い。それを知らずして、何気なく子どもにささやき、つぶやいていたとしたら・・・。子どもは呪縛と感じ、牢獄と感じてしまうこともあるだろう。苦しんでいる人やそれに気付いた周囲の人は躊躇なく専門機関等に相談してほしい。 親による呪縛は子を苦しめ、子からの反発を招く結果となる。本書は程度の差はあれ、どの家庭でも起こりうるものだと、今一度考えるきっかけとなる一冊である。多くの方に手にとってほしい。(I.Y) |
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著者・出版社・出版年 |
齊藤彩/著、講談社、2022 | |
請求記号 |
368.6/ハ |
短大はどこへ行く:ジェンダーと教育
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短期大学教育をジェンダーの視点からみた貴重なエスノグラフィー 1995年、著者は10か月間にわたり、関西にある私立女子短期大学(以下「短大」)において学生・教員へのインタビューや授業参観を行った。本書は、そこから得られた豊富なデータを基に構成されている。アメリカの大学で教員をしていた著者が短大教育に関心を持ったのは、日本の高等教育がみごとにジェンダー化(男子は4年制大、女子は短大)されており、他の先進資本主義国でも比類のない職業構造における性別分業構造と連動しているからである。 学生たちへのインタビューは、恋愛、結婚、就職、職業と家庭の両立、女性の自立、社会の性差別と、きわめて広範囲な内容を含んでいる。調査が行われた1995年は、4年制大学への女子進学者数が短大進学者数を上回り、危機感をもった短大が『女性学』の導入など改革を始めた時期にあたる。著者は、アメリカでの実践経験から、女性としての個から出発して社会問題を探求しようとする女性学こそ短大教育の優先課題にすえるべきと期待している。本書でも授業に刺激を受けた学生たちの声が紹介されているが、その学びは卒業後の人生にどのように影響したのであろうか。 私は1980年初頭に都内の短大に通い、結婚後に埼玉で『男女共同参画』や『女性学』に出会った。短大のその後が知りたくて(With Youさいたまの)情報ライブラリーで関連文献を探したが、単行本でヒットしたのは本書だけだった。日本で独自の変化を遂げた短大に焦点を当てた研究が少ないのは残念に思う。本書が出版されてすでに四半世紀が経過している。著者の「短大は生きのびるか」という問いに対して、変化を遂げた現代の短大で同様の調査を実施したらどのような結果が得られるであろうか。当時の記録と比較するのも興味深いであろう。教育分野におけるジェンダー課題を考えるうえで一読したい一冊である。(S.S) |
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著者・出版社・出版年 |
松井真知子/著、勁草書房、1997 | |
請求記号 |
377.3/タ |
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