Boomark Vol.68

Bookmarkとは、情報ライブラリーの本を紹介するコーナーです。
当センターの実施事業をボランティアでお手伝いいただいているサポートスタッフの方々による本の紹介、新刊展示架からのご紹介など、毎号、各テーマに沿った本を紹介しています。

  • DV防止フォーラム2026講演会関連本

 11月15日(日曜日)「DV防止フォーラム2026 講演会」を開催します。今回は、日本や海外で半世紀にわたり、ジェンダー平等社会の実現に向けた活動に携わる山口のり子さんに、DV加害者プログラムの重要性と、更生支援現場での経験から見えてきた実態・課題について、お話しいただきます。今回の講演会関連本として、山口のり子さんの著書の中から1冊をご紹介いたします。

『愛を言い訳にする人たち DV加害男性700人の告白』

著者:山口のり子
出版社: 梨の木舎
出版年: 2016

DV加害者プログラムにできること

〝DV〟は被害者支援を中心に取り組まれてきましたが、著者は早くから加害者にも焦点をあててきました。カリフォルニア州でDV加害者プログラムの実施者研修を受講し、帰国後に「アウェア」を立ち上げました。 
加害者がゆがんだ考え方や価値観に気づいてやめることを「学び落とす(unlearn) 
」と称し、被害者支援の一つの方法として男性を対象としたDV加害者プログラムを開始しました。 
本書では、加害者プログラムの実践内容とともに、加害者の素直な語りが多数紹介されています。プログラムを通して少しずつ変化していく様子も丁寧に描かれており、読者にも多くの気づきを与えてくれます。DVを個人の問題ではなく社会全体の課題として捉え、その本質や背景への理解を深めるきっかけを与えてくれる一冊です。 

Pick up:戦争トラウマ―心の傷がもたらす暴力の連鎖

 戦争トラウマとは、戦争で受けた心の傷が、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などとして長く残ることです。近年、多くの帰還兵が深刻なPTSDを抱えていた実態が明らかになっています。癒えない傷は、DVや依存症を通じて家族に影響し、子や孫の世代にまで苦しみを及ぼします。この暴力の連鎖を個人や家庭だけの問題とせず、戦争と家族内暴力のつながりを社会全体で考える必要があります。今回は、そのつながりと世代を超える影響を考える手がかりとして、関連する本を紹介します。

ルポ 戦争トラウマ 日本兵たちの心の傷にいま向き合う(朝日新書)

著者:後藤 遼太
      大久保 真紀
出版社: 朝日新聞出版
出版年: 2025

次世代に連鎖する戦争の傷

 新聞記者2人が綿密な取材を重ねたルポである。冒頭では、旧日本軍兵士の子どもたちに焦点を当てる。出征前は優秀で快活だった父親が、敗戦後に帰還すると酒に溺れ、悪夢や物音に悩まされ、家族に暴力を振るうようになる。やがて社会から孤立し、心身を病んで自ら命を絶った人もいた。
 本書は、子どもたちの証言に加え、広島・長崎の被爆者や沖縄戦の生存者が抱えるトラウマ、日本軍に虐待され、戦後は家族に暴力を振るうようになった元捕虜の事例も扱う。浮かび上がるのは、戦争の傷が体験者にとどまらず、次世代へ受け継がれる現実だ。暴力の描写には、読むのがつらい箇所もある。それでも、戦後81年がたち、戦争体験者が減り続ける今、多くの人に読んでほしい一冊である。

 

家族と国家は共謀する サバイバルからレジスタンスへ(角川新書)

著者:信田 さよ子
出版社: KADOKAWA
出版年: 2021

家族と国家を貫く暴力を問う

 本書は、公認心理師・臨床心理士として依存症や家族問題の臨床に長年携わってきた著者が、臨床の現場で暴力の構造や捉えがたい現実を言葉にしようと追究してきた、この10年間の軌跡である。論点は多岐にわたり、幾度ものパラダイムシフトも描かれるが、被害者の声に耳を傾け、学び、現象を見極めようとする姿勢は一貫している。
 筆者が浮かび上がらせるのは、家族内の暴力と国家が国民に及ぼす暴力が重なり合う構図である。「躾」の名のもとで続いてきた行為は、「DV」や「虐待」と名付けられて初めて、暴力として可視化された。戦争体験後のPTSDから依存や家族への暴力に至る兵士の姿にも、国家の暴力とその根深い連鎖が表れている。本書はこの現実を直視し、「被害者」という自己定義を越えて、生き延び、抗う道を探る。何度も読み返したい一冊である。

サポートスタッフのイチオシ本

江戸東京の明治維新(岩波新書)

著者: 横山百合子
出版社: 岩波書店
出版年: 2018

幕末・維新後の遊郭から見えてくる『女性の地位』

著者は国立歴史民俗学博物館名誉教授。著者の専門である『明治維新と身分制の解体(戸籍制度)』が、都市独特の背景を持つ東京で、どのように行われていたのかが書かれている。特に遊郭の女性について書かれた章は、現代まで続く女性の人権の問題を提起していると感じた。

まず注目したのは、江戸時代、遊女の身体が「商品」として通用していた構造と、明治以降も家制度で女性は跡取り(男子)を生むことを期待された構造は、「私の体なのに私に主体性がない」という点において、根底でつながっているのではないかと感じたことである。(S.S)

この地には生きるに値するものがある 「パレスチナ女性2人のガザ日記」2024-25

著者:サバラ・ムイーン
   サマル・アハマド
翻訳者:岡戸良子
出版社: 梨の木舎
出版年: 2026

ガザの日常をつづる、二人の女性の声

 本書は、ガザで暮らす大学生サバラと、4人の子を育てる母サマルの日記を日本語に訳した一冊です。海外メディアが現地に入りにくいなか、長年パレスチナを取材してきた古居みずえさんが協力者を探し、二人の記録を日本に届けました。2023年10月以降、大学閉鎖後もWi-Fiを求めて学ぶ姿や、爆発音と物資不足に耐えながら家族の日常を守る姿が、当事者の言葉でつづられています。そこから、長い占領と剥奪の歴史のなかで失われる暮らしと、それでも保たれる尊厳が浮かび上がります。
 題名は詩人マフムード・ダルウィーシュの言葉に由来し、二人の「生きるに値する」という切実な思いを表しています。食べ物もなく、爆撃が続き、逃げ場さえない現実を伝える声は、読み進めるのがつらいほど胸に迫ります。それでも、現実を知るために多くの人に手に取ってほしい一冊です。(U.A)

新刊展示架からご紹介

タイトル:『男と女、どっちがずるい?10代のジェンダー、49の疑問と悩み』
著者:アルテイシア, 太田啓子
出版社: 集英社
出版年: 2026

タイトル:『つまり、それがルッキズム ~23の事例と解説~』
著者:前川裕奈, ウィルソン麻菜
まんが:ツルリンゴスター
出版社:講談社
出版年: 2026

 タイトル:『溺れながら生きる 依存と
ケアのあいだで』
著者:信田さよ子
 出版社: 文藝春秋
 出版年: 2026

お知らせ

下記の期間は、臨時休館いたします。

  • 2026年10月14日(水曜日)…情報ライブラリー内の設備点検のため
  • 2026年12月14日(月曜日)から19日(土曜日)…特別整理(蔵書点検)のため

また、今年度、情報ライブラリー天井のLED照明化工事を予定しております。工事期間中は臨時休館となりますので、詳細が決まり次第ホームぺージでお知らせいたします。

ご不便をおかけしますが、ご理解とご協力をお願い致します。

あとがき

 With You さいたまの児童書コーナーを眺めていると、性別にとらわれない生き方や考え方、性教育に関する絵本など、自分の子どもの頃や、子育て期に出会えなかった絵本がたくさんあることに気づきます。そして、「あの頃、こうした本に出合っていたら、どんな風に読んでいただろう」と想像することがあります。
 センターには、子どもだけでなく、大人にとっても、「気づき」をくれる絵本がたくさんあります。読書の秋、お子さんと一緒に、心に残る一冊を見つけに、ぜひ遊びにいらしてください。