Bookmark Vol.67

Bookmarkとは、情報ライブラリーの本を紹介するコーナーです。
当センターの実施事業をボランティアでお手伝いいただいているサポートスタッフの方々による本の紹介、新刊展示架からのご紹介など、毎号、各テーマに沿った本を紹介しています。

男女共同参画週間講演会関連本

 7月25日(土曜日)に開催する「男女共同参画週間講演会」にジェンダーとメディア文化論研究者の田中東子さんをお招きします。その関連本として、田中東子さんのご論考2冊を紹介いたします。

『ジェンダード・イノベーション入門』


監修:石井クンツ昌子[ほか]
責任編集:高丸理香[ほか]  
出版社: 東京大学出版会
出版年: 2026

AI(人工知能)におけるジェンダー・バイアス問題とは

*本書第3部第3章「メディア・テクノロジーとジェンダード・イノベーション」(田中東子)

 生成AIは社会の偏見を学習し、女性蔑視やジェンダー不平等を再生産するおそれがあります。この論考では、AIやアルゴリズムのゆがみの具体例に加え、それに対するフェミニズムの抗議や実践も紹介しています。誰もが利用しやすいメディア空間の実現には、私たち一人ひとりが当事者としてAIとの関わり方を学び、多様な人々とともに育てていく視点が欠かせないことを示しています。講演会は、誰もがAIを身近な課題として捉え、向き合い方を考えるよい機会になるでしょう。
 本書は、お茶の水女子大学・東京大学・東北大学が連携して行った授業「ジェンダード・イノベーション入門」の成果をもとに、研究・教育・社会活用におけるジェンダー視点の重要性をわかりやすく伝える入門書です。基礎知識と実践例がバランスよくまとめられており、初めてこのテーマに触れる人にも読みやすい一冊です。

選挙との対話』


編著者: 荻上チキ
著者:飯田健[ほか]
出版社: 青弓社
出版年: 2024

なぜ女性政治家は少ないのか?

*本書第4章「なぜ女性政治家は少ないのか?――政治とジェンダー、政治家のメディア表象について」(田中東子)

田中さんは、この本の中で、これまでメディアがどのように女性政治家を報じてきたのかを踏まえ、映画やドラマなどでは「女性政治家」のロールモデルが少ないこと、現実には政治家2世や専門職からの転身が多いことをご指摘されています。
 女性議員になるのは「特別な女性」だというイメージが強化されているため、なり手が少ない、なったとしてもハラスメントに悩まされる現状から、「ジェンダーと政治」については社会と文化全体の問題として考えることを提案されています。
 さらに田中さんは、現在では多くの方が利用しているAIでも、政治と同様にジェンダー問題が反映されているとお考えです。来る講演会では、「AI倫理とジェンダー」をテーマに、テクノロジーが生む見えない差別について、ご講演いただきます。講演会にご参加いただき、直接メッセージを受け取っていただきたいと思います。

Pick up:女性参政権から80年

 今では女性が選挙で投票できるのは当たり前のように思われます。しかし、その権利は多くの先人たちの努力によって、1945年の選挙法改正で初めて獲得したものです。翌年4月10日には約1380万人の女性が初投票し、39人の女性議員が誕生しました。そこから80年経った今も、政治分野におけるジェンダー・ギャップは依然として課題です。80周年を単なる節目で終わらせず、より公平な社会へ進む一歩にしたいものです。今回は、そのための本を2冊紹介します。

ジェンダーで学ぶ政治学

編著者: 三浦まり・岡野八代
出版社: 世界思想社
出版年: 2026

従来の政治学が前提としてきた「公私二元論」を問い直す

 ジェンダーの視点で捉えると、政治が私たちの生活や生き方に深く関わっていることが見えてきます。本書は、政治の仕組みや国家、資本主義、平和構築をジェンダーの観点から学べる入門書です。身近な出来事と政治権力のつながり、そして私的領域の男女格差が公的領域にも及ぶことを、わかりやすく示しています。
 なかでも「第IV部 平和を構築する」は、武力紛争の中で多くの民間人、特に女性が犠牲になる現実や、性暴力が長く十分に裁かれてこなかった問題について考えさせます。軍事主義とジェンダーの課題に目を向けることは、目の前の問題への対応にとどまらず、将来の危機を防ぐうえでも重要だと感じます。市川房江さんの「平和なくして平等なく平等なくして平和なし」という言葉が思い起こされます。
 ジェンダーをめぐる権力構造を理解し、政治的主体として社会を見つめ直す視点を与えてくれる1冊です。

近代日本の女性参政権と政党政治 : 初期議会から「憲政常道」まで

著者:山中仁吉
出版社: 吉田書店
出版年: 2025

なぜ戦前日本で女性参政権は実現しなかったのか

 本書は、帝国議会が開設された1890年代から、政党内閣制(いわゆる「憲政の常道」)が形づくられる1920年代までの、戦前日本における女性参政権運動の展開をたどったものです。多様な運動団体や指導者の論理と戦略に着目し、政治体制が権威主義から徐々に民主化へ向かう一方で、なお女性を排除し続けた中、女性運動団体が相互の連携や男性議会政治家との関係をどのように築き、組織内の結束をどう維持・強化したのかを、豊富な史料をもとに明らかにしています。
 とりわけ、戦前の女性参政権運動における重要な成果である、第一次大戦後の治安警察法第5条改正の政治過程について、新婦人協会内外の多様なアクター(女性指導者)を整理し、組織内の結束の再生産や団体間の調整にも目を配りながら精緻に分析しています。
 女性史や政治史に関心のある方はもちろん、平等や民主主義を考えるうえでも多くの示唆を与えてくれる一冊です。

サポートスタッフのイチオシ本

学校の「男性性」を問う : 教室の「あたりまえ」をほぐす理論と実践

編著者: 大江未知 [ほか] 
出版社: 旬報社
出版年: 2025

学校に馴染めない子どもに寄り添う人に勧めたい1冊!

 本書は、教育研究者や小中高の現役教師によって執筆されている。著者たちはそれぞれの立場から、学校の『あたりまえ』に潜む「男性性」について問い直している。
 本文は、そもそも「男性性」とは何か、の問いから始まる。いわゆる「男らしさ」としてイメージするものである。そして学校生活の基準が男性基準になっていないか、学校が「家父長制」を写し取っているのではないかという疑問が提起される。
 著者たちはフェミニズム教育をいかに日本の学校で広めるか連帯し、議論し続けている。その中で、自分の感情を言葉にする練習からはじめ、語り合うのが第1歩だと考える。
 私は、発達に問題を抱える児童生徒を支援する仕事をしているが、学校になじめない生徒たちの中には、ここに出てくる「男性性」になじめない子もいるのではないか、と思えてしまう。また、「多様性を認めよう」と言いながら、学校は戦前から変わっていないのではないかと感じることもある。 
 この本は、保護者、教師、教師になりたい人、スクールカウンセラー、支援員にぜひ読んでほしい。(S.S)

介護未満の父に起きたこと(新潮社新書)

著者: ジェーン・スー
出版社: 新潮社
出版年: 2025

「介護未満はいつでもだれにでも起こること」と心に備えを!

 本書を数ページ読み「紹介したい!」と強く思った。介護に関する書籍は数あれど、本書では「介護未満」、つまり介護者が入るほどではないが、見守りが必要な親の状況をリアルに記している。多忙な著者が、離れて暮らす親をどのようにサポートできるか、失敗も交えながら実例で示しており、とても興味深い。食事のデリバリーサービス利用や、何をどれだけ食べているかが把握できる献立写真などをスマホでやり取りする描写は、時代を感じいろいろな手段が利用できると実感した。
 本書から自分の親や自身の老後を重ねる読者も多く、少しずつ老いていく状況が「自分のこと」としてリアルに伝わってくるのが多く手に取られる理由だろう。
 それにしても著者の孤軍奮闘の様子から父に対する愛情が伝わり、このような親子関係をうらやましく思った。(I.Y)

新刊展示架からご紹介

タイトル:オンナを黙らせる政治とメディア ・女性たちから見た「言論の自由」の現在地
編著者:三浦まり, 林香里
著者:中野麻美 [ほか]
出版社: 花伝社
出版年: 2026

タイトル: 転勤の社会学 
ジェンダー・家族から問う
日本的雇用システム 

著者: 藤野 敦子
出版社:勁草書房
出版年: 2026

 タイトル: じぶん、まる!
子どもたちといっしょに、性の多様性から「じぶん」について考える
文と絵: 田中 一歩 
 出版社: 解放出版社
 出版年: 2023

お知らせ

  • 令和8年9月2日(水)及び3日(木)は、停電を伴う建物内設備点検のため、臨時休館とさせていただきます。※ホテル全体が臨時休館につき、入館できません。そのためこの2日間は、情報ライブラリー図書の返却もできませんのでご注意ください。(返却Boxも設置しません。)

あとがき

 昨年秋に、日本で公開されたドキュメンタリー映画『女性の休日』。皆さんはご覧になりましたか?『女性の休日』とは、1975年10月24日、アイスランド全土で女性の90%が仕事や家事を一斉に休んだという、前代未聞のムーブメントです。たった1日の「休日」がその後のアイスランドを大きく変え、現在ではジェンダー平等先進国と呼ばれるようになりました。
 センターでは、絵本版『女性の休日』をはじめ、女性たちが連帯して社会を変えたムーブメントを紹介した書籍を所蔵しています。「誰もが生きやすい社会のために」そう願い行動した女性たちの連帯に、向き合ってみませんか。