#本棚から一冊
#本棚から一冊では、With Youさいたま職員のおすすめ本を紹介します。

「男女共同参画週間講演会」テーマの本


 2023年6月17日、櫻井彩乃さんを講師にお迎えして男女共同参画講演会「#男女共同参画ってなんですか」を開催しました。櫻井さんは若い世代の声を届ける役割を果たしていらっしゃいます。
 今回のBookmarkでは、この講演会にちなんだ図書をご紹介します。
 また、情報ライブラリーでも、6月30日まで関連図書を展示しています。貸出しもしておりますので、ぜひ、お越しください。

YOUTHQUAKE U30世代がつくる政治と社会の教科書

若い世代が「政治を語る共通言語」を獲得するため
 「若い世代は政治に関心がない」とよく言われますが、本当にそうなのでしょうか?
 日本の若い世代は個別の社会課題に問題意識を持っていることが多く、特に自分自身や身近な人に関係のある社会課題の解決に関心の高い人が多いそうです。だとしたら、「政治に関心がない」のではなく、政治について日常的に話せる土壌と共通言語を持っていないだけなのかもしれない――そう考えたNO YOUTH NO JAPAN(代表・能條桃子さん)のメンバーはU30世代が政治を語るための「政治の教科書」として本書『YOUTHQUAKE』をつくりました。
 本書のタイトルでもある『YOUTHQUAKE(ユースクエイク)』には、「若者の行動や影響から生じる著しい文化的、政治的、社会的変化」という意味があります。若い世代が政治や社会について気軽に話せるようになったら、きっと変化を起こせるはず――本書にはメンバーのそんな想いが込められています。
 本書では、私たちの身の回りにある社会問題、たとえば教育や気候変動、働き方や社会保障、介護や医療、経済格差などがどう政治とつながっているのか、そして政治の仕組みについて、イラストや図表を用いてわかりやすく説明されています。また、政治について身近な人と話す時に気を付けたいこと、考え方や価値観の違いを感じた際の「対話のコツ」についても紹介されています。
 気になったニュースを自分で調べてみる。ハッシュタグの話題について友だちと話をする。投票に行ったことをSNSに投稿する。そして、本書の感想をSNSでシェアする!(※本書は写真投稿もOK!)ーーこれらはどれも政治参加のひとつのカタチでそこに優劣はないといいます。
 本書をきっかけに、まずは自分にできそうなことから「政治参加」を始めてみませんか?
 

著者・出版社・出版年

NO YOUTH NO JAPAN編著・よはく舎・2021
 

請求記号

312.1/ア

わたし×IT=最強説 女子&ジェンダーマイノリティがITで活躍するための手引書

ITの世界をもっとカラフルに
 なぜ理工系学部に女性が少ないのか考えてみたことはありますか? 
 その理由のひとつに「理系科目は男性の方が得意」「女性には向いていない」という思い込みがあることが指摘されています。本書では客観的なデータを用いて、「女性は理数系科目が苦手」というのは性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)であると教えてくれます。もしも自分は理系に向いていない、無理かも……と進路に悩んでいるなら、ぜひこの本を手に取ってみてください。周囲の思い込みや偏見が知らないうちに刷り込まれ、自分の可能性を狭めていたことに気づけるかもしれません。
 本書はNPO法人Waffle(ワッフル)により、ITの面白さや、その先にある多様な生き方を、少しでも多くの中高生に伝えたいという想いでつくられました。WaffleIT分野におけるジェンダーギャップ(性別による格差)の解消を目指し、中高生女子及びジェンダーマイノリティに向けたウェブサイト作成やプログラミング研修などを実施している団体です。昨年度(2022年)はWith You さいたまでも共催講座「Waffle Camp」を行いました。
 理工系に進んでも具体的にどんな仕事につながるのかわからない、身近に理系分野で活躍する女性がいない、そんな方には本書の後半部分に掲載されているIT分野で活躍する16人のエンジニア・研究者らのインタビューがおすすめです。「女性だから」に縛られない多様な生き方からは、多くのヒントと勇気をもらえるはずです。
 性別にとらわれて、選択肢の幅を狭めるなんてもったいない。自分の「好き!」を信じて、ワクワクする道を選んでみませんか?
 

著者・出版社・出版年

NPO法人Waffle著・株式会社リトルモア ・2023 
 

請求記号

007/ワ

気になる本


 With Youさいたま職員がちょっと気になるテーマの本、話題になりそうな内容の本を紹介していきます。

フェミニスト・シティ

都市を「女性の視点」で見直すと、どう変わるだろうか
 ひとりでカフェに座って過ごす時間はしみじみと嬉しい瞬間である。しかしデパート以外で、街で使えるトイレを探すのは厄介である。暗い夜道は避けて帰らなくてはならない。ただ運まかせに街を歩き回っている女性などほとんどいないのではないか。女性にとって都市は、常に何かの役割を求められる家庭から解放される自由の空間でもあり、女性に対する偏見やハラスメント・暴力に満ちた危険な空間でもある。
 こうした都市の両義性を、著者は自らの経験を基点にして描き出し、いかに近代以降の都市計画がシスジェンダー(異性愛者)で健常者の男性のニーズに沿って進められてきたかを明らかにする。本書でいう「フェミニスト・シティ」とは、経済活動を優先するのではなく、無償労働やケアワークを支え合う都市のあり方を表しており、住居や交通機関、育児環境の改善といった、さまざまな方法で実現が可能だと説明する。
 その重要な要素として、筆者が挙げるのが「友人関係」だ。人生において、友人関係がもたらす便益は、夫または妻がもたらすものよりも大きく、住宅が友人同士の関係を育むのに適した形へと変化すれば、より暮らしやすい社会への変容を促すと強調する。確かに、多くの女性は、友人に囲まれ、友人が与えてくれるケアや笑いや冒険に囲まれて老年を過ごすことを夢見ている。
 もう一つは女性たちが声を上げることだ。その際に都市から追いやられる可能性に怯える人たちの存在を想像することが重要になる。女性の視点から、異性愛による核家族を前提とせず、都市の生活について考え始めることは、無意識的に思い込んできた私たちの「当たり前」に気づく第一歩でもある。
 本書には、ウイーンやカナダなどの都市計画の実践例が紹介されており、その難しさも含めて各地の挑戦には学ぶ点が多かった。タイトルに惑わされずに、ぜひ多くの人に読んでもらいたい。
 

著者・出版社・出版年

レスリー・カーン著・東辻賢治郎訳・晶文社・2022
 

請求記号

518.8/フ

プリテンド・ファーザー

プリテンドって何  
 ある事情から父親2人と子ども2人で始めた同居生活。4歳の子を持つ父親であり会社組織の一員である恭平と、保育士としての経験を活かし、恭平の子どものシッターを務めることになった1歳児の父、章吾。章吾は家事と大好きな育児を担いながらも「自分の人生が前に進んでいる気がしない」と感じる事もある。一方恭平はと言えば、シッター代金として章吾に十数万円支払う事で「(家事育児は)妻がするのが当然だ」と、仕事を辞め専業主婦となった妻の存在価値に気づき、遅ればせながら妻に感謝する。

 「育児をしない母親なんて、母親じゃないでしょ?」「男は仕事、女は家庭。その定型に合わない奴は大多数に迷惑かけないように隅っこで生きてくしかない」等と2人の周囲にはいろいろな価値観を持った人間が大勢いる。しかし2人(特に恭平)は子育てを通じ、現実を受け入れつつも少しずつ自分の価値基準を変化させていき、本当の意味での父親に成長していく。

 数十年前までは「男性は仕事、女性は家庭」が当たり前の社会であったのも事実であり、それを否定するつもりは全くない。しかし社会が大きく変化している中で、他人の生き方を否定せず、また自分の価値観を押しつけずに、相手を受け入れ尊重する事はできるはずだ。

 「自分はどうありたいのか。自分にとって大切なのは何か」と考えさせられつつ、作中の言葉に「なるほど」、「そのとおり」、「よくぞ言ってくれた」と感じる箇所が随所に散りばめられている。そして改めて読み終わった後に「プリテンド」という耳慣れない言葉がすっと心に響いてくる。子育て世代のみならず、すべての年代の方々に読んで頂きたい一冊である。
 

著者・出版社・出版年

白岩 玄・集英社・2022
 

請求記号

913.6/

るるぶマンガとクイズで楽しく学ぶ!SDGs : 世界で活躍できる「考える力」がつく!

未来を生きる子どもたちに「考える力」を!
 ここ数年「SDGs」という言葉をよく見聞きするようになりました。この本は17の目標ごとに、短いマンガ形式での問題提起から始まり、最後にはクイズが付いていて、楽しみながら知識の定着が図られる仕組みになっています。「文字が多い本はちょっと苦手・・・」というお子さまも、手に取りやすい児童書です。図やグラフを使った解説も多く、調べ学習や自由研究にも役立ちます。

 SDGsについては、大人も知らないことが意外と多く、新たな発見や気づきがあるものです。親子で一緒に読んだり、クイズを出し合ったりするのも良いですね。この本でSDGsの基本を押さえておくことで、その後は新聞記事やニュースもより広い視野でとらえることができ、自分の考えや意見も自然に生まれることでしょう。

 「家庭でお母さんとお父さんが家事と育児に費やす時間」や「ジェンダーレス制服」など、身近な話題も多く取り上げられていて、SDGsは決して遠い目標ではないことに気づかされます。所々に出てくる「私たちができること」のコーナーは、身近でありながらも、これまでしていなかったことを実践する後押しをしてくれます。

 これからの未来を生きる多くの子どもたちが、この本を読むことで「考える力」が養われ、「誰一人取り残さない」世界になることを願います。 
 

著者・出版社・出版年

笹谷秀光監修・JTBパブリッシング・2022.
 

請求記号

519/ル

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